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KeN's GNU/Linux Diary
... 料理とDebianと雑多な記録


2016年06月15日 この日を編集

_ [computer] 同人誌を作ってみた『Re:VIEW+InDesign制作技法』 制作話(1)

製本も無事届いたので、(ここからの発送事故やイベントの突然の中止といった不測の事態がない限り、)『Re:VIEW+InDesign制作技法』を6月25日、技術書典の委託ブースにて販売できる運びとなりました。完売できるといいなぁと祈っています。


何かの参考になるかもしれないので、制作裏話をまとめていこうと思います。

動機

  • ドキュメントシステムRe:VIEWに関する制作本を書きたかった。入門書はすでにTechBoosterさんが書かれているけど、InDesign XMLまわりはまとまった情報を提供できていなかった。
  • 第2回Re:VIEW開発者会議のあたりで@mhidakaさんに技術書典のお誘いを受け、いい機会だと思った。
  • ちょうど仕事が谷間でヒマだったし、社内教育的にもInDesignやJavaScriptまわりはまとめたかった。
  • 執筆・編集・DTP・表紙まわり・印刷所交渉・価格付け・宣伝をまとめて経験してみたかった(『銀の匙』に少し影響されたかも)。紙面デザインはセンスと経験が圧倒的に不足しているので、プロのデザイナーに依頼。私的な事情で自身で手売りすることは避けたいので、販売は委託前提で甘えることに。

進行

  • 3月17日頃 リポジトリを作成、基調として前書きを書いてみる。以降、時間を見つけては執筆にいそしむ。
  • 3月25日 本書説明にかかる、これまで社内のみで使用していたIDGXMLのための各種のライブラリをGitHubで公開。
  • 4月3日 @fjtさんに写真データ依頼。
  • 4月5日 必要な登場要素が決まったので、組見本テキストを作り、紙面デザインをデザイナーに依頼。表紙デザインのラフ完成。
  • 4月22日 紙面デザイン着。
  • 4月26日 ランディングページの準備開始。
  • 4月末 全体の70%くらい進捗。総ページ数の上限を決め、ページ数が無駄にふくらむ箇所はカットしていく。
  • 5月2日 技術書典 委託に申し込み。印刷所に見積り依頼。
  • 5月17日 ひとまず脱稿。初校を組む。コンビニでB4見開き印刷をしてゲラ校正。
  • 5月20日 組み直して再校を作成。査読者に査読依頼。表紙・背・裏表紙ほぼ完成。
  • 5月27日 印刷所に最終仕様の見積り依頼。
  • 5月29日 表紙まわりと組見本の出力見本着。品質に問題ないというか予想以上なことを確認。
  • 5月30日 結果を反映して3校作成。
  • 5月31日 少し見直して4校作成、表紙まわりも確定。ランディングページをアナウンス。入稿データをそろえる。
  • 6月1日 印刷所入稿。Dropbox経由でPDFアーカイブ渡し。GitHubの情報ページの構築を開始。
  • 6月14日 製本到着!
  • 6月25日 技術書典委託ブース(予定)

執筆スタイル

目次構成についてはあまり悩まず、書くべき内容はおおむね頭の中で構想できていたので、まず各章のreファイルを用意し、そこに埋めるべき項目を箇条書きで書いておいて、それを順に埋めていくようにした。

少し入れ替えたり、「これを深く書いてもページ数が増えるばかりでしょうがないな」と思った箇所はバッサリ削除したりしたけれども、骨格の説明順序は原案そのままとしている。

執筆はDebian上のEmacs+SKK。

草稿が完成したあとにJust Right!で表記揺れなどを確認し、RedPenも使ってみた。推敲は紙のほうがやりやすいので、初校のPDFをUSBメモリに入れて、セブンイレブンでB4見開き印刷をして赤入れし、結果をreファイルに戻すようにしていた。

Debian徹底入門だと書くために大量の調べ物が必要で、そうしているうちに辛い仕事が入って中断、なんとか抜け出た頃には疲弊してモチベーション死亡、ということの繰り返しで未だに進めない状態にあるのだけれども、今回は熟知している内容をとりまとめる短期間集中執筆だったのと、たまたま重い仕事が入らなかったことで、完成にこぎつけることができた。締切ドリブン重要。Debian徹底入門も1章単位ずつで出版するつもりで書けばなんとかなるのかな……。

協力依頼

自身ではできないところについては、友人たちの協力をいただいた。

  • 表紙の素材として、確かな写真の腕を持つ友人の@fjtさんから複数の写真データをいただいた。第一候補だったメジロは少し目の付近がボケていて表紙用に引き伸ばすとそれが目立ってしまうこと、第二候補のクラゲは綺麗だけれどもあしらいがちょっと難しい上に不気味かもしれないことから、新たな候補として、色のメリハリがシャープで綺麗なイソヒヨドリを選択。
  • 「センスのよい紙面デザイン」を私が作るのは無理なので、同僚のデザイナーである轟木さんに、個人的な仕事として紙面デザインの制作を依頼した。出来はさすがというほかない。表紙や裏表紙にもアドバイスを受け、当初のものよりもずっと良くなった。
  • 自分ではかなりしっかり見返したつもりだったが、査読を依頼した@MoCo7さんには次々と記述のミスや読みにくい箇所を見つけてもらい、汗顔の至り。本当に助かった。

続く


2016年06月16日 この日を編集

_ [computer] 同人誌を作ってみた『Re:VIEW+InDesign制作技法』 制作話(2)

引き続き

コンセプト

ターゲットは次のように設計(おおむね上にあるほうが主)。章単位で読み切れるようにして、個人でも業務でも使えるようにしてみた。

  • エンジニアが、Adobe Creative Cloudなどを契約してInDesignでそれっぽい紙面を作れるようになる。
  • DTPオペレータが自動DTPでのオペレーションと注意事項を理解できるようになる。
  • 紙面デザイナーが自動DTPに向いた紙面デザインについて考慮できるようになる。
  • 編集や営業が、Re:VIEWと自動DTPとはどういうものかを理解できるようになる。
  • プログラマが、Re:VIEWや、自動DTP・フィルタプログラムの開発手法を把握できるようになる。
  • 制作会社が、Re:VIEW原稿に対して恐れずに関われるようになる。

最後のは、一応これでご飯を食べている身としてはコンペを作ることになるわけで、受注が減るリスクはある。ただ、この点については会社とも話し合い済みで、Re:VIEWがそこそこ認知を得た今では、「Re:VIEWだと1社に束縛されちゃうのがちょっと……」という版元さんの懸念とか、「Re:VIEWでせっかく書いたのに編集DTPの従来工程でガッカリに」という著者さんの悲痛な声などが耳に入るようになってきており、技術公開をすることで裾野を広げていく方向にしたほうがよいという決定をしていた。

紙面デザインを本職のデザイナーに頼んだのは、自分にはそのセンスがないというのもあるのだけれども、

  • Re:VIEWでいかにプロっぽい紙面を作るかというDTP技術を説明する本なのに、その本の紙面がボロボロでは説得力がない。
  • デザイナーから上がってきた組見本から、実際の開発手順を踏んで変換していくさまをLiveハックのように見せていきたい。
  • そうやって調整し、作り上げた紙面レイアウトをそのまま使用してレイアウトにかかる説明の不備もなくしたい(いわゆる「ドッグフードを食べる」)。
  • レイアウトファイルをMITライセンスで公開配布するので、素人くさいものではなく、プロの品質で出したい。

という意図が込められている。

印刷所選定

電子版を作ることは業務でもやっていることで新味はないし、表紙や印刷所交渉を含めてチャレンジしてみたかった。

あまりにコストがかかるようであれば諦めるところだったけれども、いくつか同人誌系印刷会社のオンデマンド印刷での簡易見積りを見て、そう無茶な額ではなさそうと判断。運営さまから委託販売の確約をいただいたので、正式に製本版で出すことを決意した。

複数の印刷所をネットでみつくろってみる。条件は以下のとおり。

  • 192Pの製本ができること(100P以下の本を安くできるところは多いけど……)。
  • 無茶な額でないこと。
  • 薄い紙面紙があること(90kは厚すぎ。1冊の厚さと重さがえらいことになる)。
  • 担当の反応がよいこと。

やりとりを経て、PrintBookWayというサービスを運営している小野高速印刷株式会社さんにお願いすることに決定。金額はもう少し安いところがあったものの、反応が早く、手頃な上質70kの用意があり、基本仕様がわりとリッチだったのがポイント。

最終見積り時に、表紙・裏表紙と本文サンプルのPDFを送って印刷に問題のありそうな箇所がないか確認してもらったところ、その出力見本をすぐに郵送をしてくれた。サンプルのPDFはトンボ付きX-4 CMYK(本文はK1色)でメール入稿。

……自分、正直、オンデマンド舐めてた。品質にちょっと感動した。

表紙はグロス(光沢あり)PP加工で依頼予定だったが、念のためということでマット(光沢なし)PP加工のバージョンも同封してくれていたので比較。


マットは商業書籍っぽい余裕と落ち着きがあるが、派手さではやはりグロスが勝る。そもそも同人誌でPP加工はやりすぎではという説はあるが、職業病でな……。

本文紙面の紙厚は目論見どおりで、厚すぎず、透けすぎもせず、細かな部分の表現も綺麗にできていた。粗探しをすれば、少し黒が濃く出るかな、アミ部分はわずかに揺らぎがあるかな、というくらい。トンボ付きで入稿したことで、フチまで綺麗に印刷されている。

品質に満足し、最終の入稿仕様は次のとおりとなった。

  • PDF入稿: 本文・表紙ともにX-4、トンボあり、フォント埋め込み済み。Dropbox経由でアーカイブ渡し
  • B5正寸
  • 本文モノクロ 176ページ、上質紙70k、無線綴じ(左綴じ)
  • 表紙CMYKカラー アートポスト180k、グロスPP加工、背8.8mm
  • 見返し 印刷なし、色上厚口銀ねず

すでに同人誌レベルじゃない気がしている。

価格設計

趣味の範ちゅうで利益を求めているわけではないけれども、印刷・製本という業者を利用する時点で費用はそれなりにかかることになり、その費用回収くらいはさすがにある程度させてほしい。

オンデマンド印刷の場合、ページ数や部数を増やすとそのまま積算されていくので、オフセット印刷のようなスケールメリットは薄い。無論、オフセット印刷のほうは最低部数も費用も大掛かりすぎるので、考慮の余地はない。

本文は176Pでまとまる目途が立ったので、ほかに価格に響くのは部数である。スケールメリットがないと書いたが、実際にはオンデマンドでも部数が多ければ割引が効いて少しはスケールメリットになる。ただし……

  • 委託なので、上限部数が決まっている
  • 在庫の保管、販売、発送の責任を自分は負えない

ということを踏まえて、部数は上限部数よりもやや少なくし(売れ残るリスクと、普通の同人誌よりも書籍サイズがスペースを食うための遠慮)、自身の確保ぶんも最低の献本数のみに留める。

少部数のため、印刷原価は1冊あたり1,300円弱。消費税が痛い。

このほかの費用としては、

  • 協力してくれたデザイナー、査読、写真提供の友人たちおよびパートナーへの謝礼品
  • コンビニのプリンタ使用料
  • 技術書典 委託費
  • 技術書典会場への配送費

などがある。

当初は委託については500円か1,000円という枠組みしかなく、これだと1冊ごとに赤字幅が膨らんで死んでしまうので、運営さまに泣きついて500円単位の任意価格設定に変更いただいた。

諸経費の回収も考えると、本来の値付けは2,000円〜2,500円の範囲だろうか。

  • TechBoosterさんの『技術書をかこう!〜はじめてのRe:VIEW〜』が1,000円。
  • 本書と同じくらいの厚みの『Software Design』が1,220円(スケールメリットが違うけど……)。
  • 大赤字やダンピングは避けたいけど、こんなニッチなものに高く付けすぎて売れ残って在庫になるのも嫌だ……(あと、利益が変に出ても、対出版社でないのでいろいろ面倒なことになる)

とモヤモヤと考えた末、定価2,000円、ただし技術書典特別価格として「1,500円」に決定した。世の中の版元編集者はこういう思いをしながら価格設計しているんだなぁ、という感慨。

(謝礼品を除いた)諸経費と献本ぶん減益を入れると仮に全部掃けたとしても赤字だけれども、自分としてはとても良い経験だったので許容範囲(投げ銭、Amazonギフト券は歓迎(笑))。

とはいえ、今後増刷してほかの箇所への委託を仮に計画するとしても、特別価格ではもう無理なので、その点は少し禍根になるかもしれない。

続く


2016年06月17日 この日を編集

_ [computer] 同人誌を作ってみた『Re:VIEW+InDesign制作技法』 制作話(3)

引き続き

宣伝

在庫になってもはなはだ困るし、ネットでの宣伝は今後著者・編集者として重要な仕事の1つになると感じているので、完売させるべく宣伝活動をする。

ネット上での告知にあたって、ポスターに相当するランディングページを用意することにした。仕組みには一度使ってみたかった「でんでんランディングページ」を採用した。

最初Tumblrと組み合わせてどう使うかわからずとまどったのだが、要するにTumblrのコンテンツは無視して、レイアウトで全部を表すようになっているわけだ。ランディングのパターンはセクションの豊富さに比例して軽量・通常・増量と取り揃えられているが、細かな事柄はGitHub等に送るようにして、一番簡素な軽量版を適用する。

ランディングページの基本デザインは、本当に「プロの犯行」とも言うべきもの。画像と文章を少しあしらうだけで、とてもカッコイイページができあがる。


構築はだいぶ前に済ませていたものの、早すぎず・遅すぎずの公開タイミングを考え、5月31日の14時頃に発表。

  • Twitter: 29RT、33Like。フォロワー数1,100なので、このくらいが限度かな。同僚のワーママは3,000フォロワー越えなので圧倒的敗北…っ!
  • Facebook: 50いいね、シェア8。有名人のシェアのおかげでだいぶ広がった。

はてなブックマークはページには付けていたけれども、まったく伸びず。

反応からすると委託上限まで部数を乗せてもよかったかもしれないけれども、見積り確定していたこともあり、現状部数のまま進めることにした。ただ、売り切ったときの対応を真剣に考えていく必要があると判断。電子版をまじめに検討し始める。

表紙・背・裏表紙の作成

表紙まで本職デザイナーに頼むとさすがに謝礼品程度では無茶で、フルコースかヴィンテージが必要になってしまう(笑)。くるみ印刷(表紙・背・裏表紙を横長の1枚に印刷して、それで本文紙をぐるりと包む)の表紙を自分でちゃんと作ったことはなかったので、この機会に挑戦してみることにした。

写真については先に記事にしたとおり、@fjtさんからデータをいただいた。CMYK色変換・サイズ調整・トリミングのほかは元写真そのまま。

書名を決めたのも表紙を作っているときだったという記憶。

背は192Pぶんの見積り時に問い合わせて9.6mmで仮に作成。その後、最終176Pになって8.8mmに変更した。背の上に黒い帯を入れるのはオーム社さんの本でそういうのがあって引き締まってカッコイイなと思って真似したのだけれども、これはオーム社の@hmoritaさん流らしい。

文字のバランスや色合いについては、オーム社や翔泳社の装丁を参考にしつつ、パートナーからいろいろと意見を言ってもらって取り入れている。

裏表紙が少し寂しかったので、商業書籍であればISBNバーコードがある位置に、サイトのQRコードをあしらってみた。いい感じ。


ちなみに、Illustratorで大きなアートボードの上に表紙〜裏表紙を置いたあと、「トリムマークでトンボを付ける」という行為は悪手、とDTP勉強会で聞いた。そうやって付けたトンボは「トンボに見えるような何か」であって、印刷所で作業し直しが発生してしまうらしい。アートボードを仕上がりサイズにリサイズし、トンボはIllustratorのPDF出力時設定で付けるのが正しいそうだ。

電子版

来週には正式に発表できると思うが、電子版販売の出版契約書を先ほど送ったところ。PDFとリフローEPUBで販売予定。刊行日はまだ明言できないけど、鋭意準備中。

比較製本版電子版
在庫刷り部数限り(会場オンデマンド印刷の可能性はあるがボリューム的に高額になる可能性)潤沢
紙面モノクロカラー
重量377g0g (表示装置含まず)
表紙カラーPPグロス加工カラー高画質PDFまたはJPEG
背表紙ありなし

正誤表に上げているものと、いくつか文言まわりの修正を、電子版では反映している。

続く、かも。ひとまず、25日をお楽しみに。


2016年06月26日 この日を編集

_ [computer] 『Re:VIEW+InDesign制作技法』製本版完売御礼と電子版販売のお知らせ

昨日に技術書典委託ブースで販売した『Re:VIEW+InDesign制作技法』製本版は、開始17分で完売となりました(びっくり)。 お買い上げいただいた方々への大きな感謝とともに、当日購入できなかったという方々には残念な思いをさせてしまいました。

電子版の販路について検討中とこれまで申し上げていましたが、明日6月27日(月)、達人出版会さまを発行元として『Re:VIEW+InDesign制作技法』電子版の販売を開始いたします。


形式はPDFまたはEPUBで、製本版ではモノクロだった画面キャプチャもカラーで表現。PDF版はB5 180ページ、EPUBはリフロー型です。定価は1,500円+税となります。

試し読みは達人出版会サイトで公開される予定ですし、http://review.kmuto.jp/ の「素材を入手」からも本書の使用データのダウンロードおよび関連情報を得られます。

Re:VIEW、InDesign、JavaScriptを組み合わせた本格的な紙面を作る手法、自分のできる限りをもって書き記しましたので、ぜひご覧いただければ幸いです。

追記

販売を開始しました。序盤のサンプルも販売サイトに上がっておりますので、ご覧いただき、ご購入の判断の参考にしてくださいませ。