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KeN's GNU/Linux Diary
... 料理とDebianと雑多な記録


2011年09月16日

_ [review] Cooking for Geeks 料理の科学と実践レシピ

Cooking for Geeks ―料理の科学と実践レシピ (Make: Japan Books)
Jeff Potter/水原 文
オライリージャパン
¥ 3,570

オライリージャパン様より献本いただいた。ありがとうございます。

あなたは家庭科の調理実習の授業のときに、料理手順よりも「温度による卵の茹で上がり方の違い」や「酢水によるアク抜きの原理」といった囲み記事に興味津々だった向きだろうか。重曹がなぜ膨らむのか、ミントキャンディを舐めるとスッキリした気になるのはなぜか、タンパク質がどのように変性していくのかを知りたいと思ったことはないだろうか。

もしそうなら、本書はまさに極上の楽しみを与えてくれる調理実習本だ。

しかも、文科省検定済み家庭科調理実習本と違って、囲み記事だったものが本書の本体で、料理レシピは囲み記事扱いである。これはいい! ぜひ全国の家庭科の先生は本書を副読本として、お子様はもとよりご父兄の皆さまも巻き込んでいただきたい。

タイトルだけを聞くと「ハッカー料理? CPUで目玉焼きでも作るの?」と想像してしまうかもしれないが、中身は、調理という技術へのリスペクトにあふれている。

自分用の料理ともてなし用の料理での違いは何か。コンロやキッチンはどのような構成が最適で、どういう調理器具を備えておくと便利か。飲み物と食べ物はどのような相性があるか。レゴでアイスクリームメーカーはどうやって作るか。味覚調整に各国でどのようなものを使っているか。ステーキはどのように焼いていくのがよいか。サルモネラなどの食虫毒をどうやって防ぐか。カラメルはどのような化学反応から生じているか。製粉ごとのグルテン含有率を一覧にするとどうなるか。計量の誤差範囲は料理の種類によってどの程度か。メレンゲを作るボウルは何を使うとよいか。食品添加物とはどのようなものか。モッツァレラチーズを作るにはどうしたらよいか。なめらかな口溶けはどのように作り出すか。液体窒素で何か調理できるか。……書き出したものだけでもわくわくしないだろうか? これはほんの触りだ。

プロの料理人から、科学者、料理ブロガー、そしてアダム・サヴェッジ(ディスカバリーチャネル『怪しい伝説』の彼だ!)にティム・オライリーまで、多岐にわたる分野の人々に料理をテーマにインタビューした記事も楽しい。

注意すべき主なアレルギーについても巻末に掲載されているのがまたポイント高い。

えーと、一応料理本でもあるし、実践レシピと書いてあるのでレシピのほうも触れておくと……、レシピのほうはものすごい白眉のものがあるわけじゃない。手取り足取りではないので、行間を補いながら読める人じゃないと再現は苦労するだろう。あと、料理の写真がモノクロというのは、特に料理というジャンルでは情報の劣化ダメージが大きいと思う(電子書籍版ならカラーになりますかね!?)。ページをめくらなくても済むようになるべく1ページに収めるという配慮はなされていて、普通の目次のほかにジャンル別の目次も用意されているといった料理本の基本は押さえてはいるものの、水に弱そうな紙質だし、台所に置くことはお勧めしがたい。あぁ、ご期待のとおり、ピッツァについてはさまざまに最高のものを作るための考察・追求に満ちている。

さて、本書は、原書が発刊された当時から、「いいなー、監修とかしてみたいなー」とチラッチラッとアプローチをしていたのだが、そのうち立ち消えになったのかなぁと思っていたところで今回の邦訳発刊の話を聞いた次第だ(ショボーン)。

で、ひどい訳だったらケチョンケチョンにしてやろうと手ぐすね引いていたのだが……これは素晴しい翻訳。翻訳された水原さんに素直に脱帽、感謝(とちょっぴりの嫉妬のスパイスを添えて)をお贈り申し上げたい。